河津 太郎さんTAROU KAWAZU

南小国町age.31

山といっしょに歳を重ねて行くのが楽しみです。

「青年林業士」(熊本県指定)の河津太郎さん(31)は、南小国でご両親とともに農林業を営まれているいわゆる自伐林家(自分の山の木を自分で伐採して出荷する)さんです。

林業歴は10年。「といっても自分は林業は冬場だけなので。うちは23ヘクタールという限られた面積ですし。」と太郎さん。冬場は林業と山の手入れと椎茸、夏場は野菜の出荷や畑、田んぼ。そして山の下草刈りも。

太郎さんはお若いのになんというか安定感があり、話しているとなんだかおじいちゃんとしゃべっているような印象が。とお伝えすると「小さい頃からじいちゃん子で、山で遊びよったからですかねぇ」。まだ歩けない赤ちゃんの頃から山に行き、家族が山仕事をしている間いっしょに山で過ごした。

家業を継いでくれと言われたことは無い。農業にも林業にも興味があって、22歳頃から手伝い始め、29歳の時に本格的に家業を継ぐことにした。

山仕事の好きなところは?
「いっしょに歳を重ねて行くところ。家族みたいな感じ。愛着も。去年間伐したところを見ると、気持ちよさそうに見えるし、間伐後5〜6年経って暗くなっているところを見ると、手をかけてあげないと、と思う。年々太って(育って大きくなって)来たのもわかる。定期的に間伐しないと太るスピードも違う。」「山の手入れのサイクルは野菜と同じ。苗を植え、間引きをし、草を刈り成長を助ける。間伐・主伐は野菜でいうところの”収穫“。そして、規格をできるだけ高く売れるように揃えて出す。木の性質を見てより高く売れるように玉伐る。」

しかし、林業は農業と違って、農業でいうところの”収穫“の時期を迎えるのに何十年という月日を要する。「木を育てるには3代かかる。皆が繋げていかないとできない。しかも、各世代がそれぞれ一生懸命やって、はじめて実りが得られる。」

植林、下草刈り、枝打ち、間伐、除伐など、地道で大変な作業を、先代たちが代々、黙々と続けて山を守って来てくれた。その積み重ねの上に、今この山がある。「それは愛情でしかない」と語る太郎さん。子や孫、そして山への。

仕事帰りに近所の山の山主さん(今は遠方に住む80代)と遭遇した。来て、ただ山を見ている。高齢で体がきかなくなり山仕事はできなくなっているのだが、わざわざ車でやってきて、ただ眺めている。自分が受け継ぎ、手入れをしてきた山を。「いい山ですね」思わず声をかける。山好きな人は愛情がすごい。子供や孫にきれいな山を残したい、と。そして、それは単にきれいなだけではなく、物理的にも財産でもある。子や孫が、もしもお金に困った時には、山の木を伐って出せば、まとまったお金もできる。

手入れした山を見るのがたのしみ。

あの80代の山主さんのように、ただ眺めてる。自分もそうなるだろうなぁ。きっと父も。

背中を追っているのは親父。憧れとかいうものでは無いけれども、「すごいな」と思う。木の知識から、技術から、歴史から何でも知っている。

「自分が40歳、50歳になるのが今から楽しみです」
その年齢を迎える頃「主伐」といって、いよいよ”収穫“の時を迎える。そしてその作業の後には、未来の子孫への贈り物、新しく苗を植える作業。「どの場所にどういう苗を植えるか?」時代の流れと共にもしかしたら人々が好む木も変わってくるかもしれず、自分がよかれと思って植えた木がもしかしたら将来全く需要の無い種類になる可能性だってある。でも、どのような山にするか自分たちで考えられるのが自伐林家の楽しみ。愛着もわく。

同世代の自伐林家さんがなかなか近くにはおらず、交流したいと願っていたところ、球磨地域の同世代の自伐林家さんと繋がることができた。語り始めるとお互いに、いくら話しても、話が尽きない。これからは、どんどん熊本の同世代の自伐林業の人と繋がっていきたい。

「70年、80年生の樹々のある手入れされた山(3代に渡って手入れされて来た山)をぜひ見てみたいです。そして、話も聞いてみたいです。」

当初物静かな印象を受けましたが山について語り始めると、話が止まらないくらいとても熱い!太郎さんの樹や山に対する愛情がひしひしと伝わってきました。

まだパートナーはいらっしゃらないようですが、これからきっとすてきな方と出会われ、次の世代へ美しい山を渡して行かれることですね!

祖父の時代からの山の記録の写真
太郎さんが愛情を注いで作ったトマト
(河津農林0967-42-0124)(写真提供:河津太郎さん)

あその山モンの1日

6:30 起床(‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬用意や朝食)‬‬
8:00 仕事開始
11:30 家に帰ってお昼ご飯
13:00 仕事
17:00 仕事終了
18:00~23:00 ご飯・お風呂など
23:30 就寝

山モンを目指している人へのメッセージ

自然の中で体を動かすと気持ちがいいですよ!木と一緒にゆっくり年輪を刻みましょう!

  • このコンテンツは、パンフレット「ASO NO YAMAMON WORLD」に掲載した「カメラマンが見た山モンの姿」を転載したものです。
  • 内容はパンフレット掲載時点のものになります。